交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。

ここでは消極損害に含まれる交通事故の被害者を雇用している会社の損害について解説しています。

被害者を雇用している会社の損害

会社の役員や従業員が事故で負傷し、就労が不可能または制限されているのに、会社において従前通り報酬や給料を支払っていた場合には、本来、会社の役員や従業員が加害者に対して請求できる損害を会社が肩代わりしたものとして、会社においてその分を加害者に対し請求することができる場合があります。

会社の役員や従業員が事故で負傷した場合、会社が加害者に対し会社固有の損害(いわゆる間接損害)を請求できるかについては、いわゆる個人会社であり、被害者である当該個人に実権が集中し、同時に会社の機関として代替性がなく、経済的に同人と会社とが一体をなす関係にあるものと認められる場合には、事故による個人の受傷と会社の利益の逸失との間に相当因果関係が認められます。

企業損害に関する主な判例

[最判昭和43年11月15日民集22巻12号2614頁]

被上告会社は法人とは名ばかりの、俗に言う個人会社であり、その実権は従前同様A個人に集中して、同人には被上告会社の機関として代替性がなく、経済的に同人と被上告会社とは一体をなす関係にある者と認められるのであって、かかる原審認定の事実関係のもとにおいては、原審が、上告人の影に対する加害行為と同人の受賞による被上告会社の利益の逸失との間に相当因果関係の存することを認め、形式上間接の被害者たる被上国外車の本訴請求を認容しうべきものとした判断は、正当である。

[東京高判昭和54年4月17日交民12巻2号344頁]

事業の経営者は、通常、事業に従事するものが不時の災害を受けても営業に支障を生じないようあらかじめ担当者の配置換、あるいは後任者の養成など種々対応策を講じておくべきであり、その事業または従業員の職種が特殊の高度な専門的知識や長年の経験を要する場合において、経営者がその従業員により継続的な事業を維持しようとするときは、なおさら右の要請は強いといえるのであり、事業はその従業員が余人をもって代え難い者であればある程その者の事故に伴い停滞し、あるいは困難となる危険が大きいが、その危険の状況は、その危険があるのにそのような継続的事業をしようとする経営者の責任であると言うべきである。

したがって、本件において、「企業の従業員として代替性がないこと」をもって相当因果関係存在の一つの判断基準とするのは相当ではない。

また、経営者がこの点につき万全の方策を講ずるかぎり、従業員が事故により事業に従事できなくなっても、右方策に従い直ちに他の者を補充し事業に支障を生じさせないことができるから、経営者がその対応策を講ずることを怠り、従業員が交通事故で従事できなくなり事実上の損害を生じたとしても、そのような損害は交通事故の加害者において一般に通常予見可能であったということのできる損害とは認め難いといわなければならない。

[最判昭和54年12月13日交民12巻6号1463頁]

(上記東京高裁判決を受けて)原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係のもとにおいて、上告人の本訴請求を棄却した原審の判断は正当である。

終わりに

以上、交通事故による消極損害に含まれる交通事故の被害者を雇用している会社の損害について確認いたしました。

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