交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。

ここでは消極損害に含まれる後遺障害逸失利益の算定について解説していきます。

後遺障害による逸失利益の算定方法

基礎収入に労働能力の喪失割合を乗じ、これに喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定します。

令和2年3月31日までに発生した交通事故に対応するライプニッツ係数はこちら

令和2年4月1日以降に発生した交通事故に対応するライプニッツ係数はこちら

[計算式]

基礎収入×労働能力喪失割合×喪失期間に対応するライプニッツ係数

後遺障害逸失利益とは、被害者に後遺障害が残り労働能力が低下したことによる収入額の減少のことをいいます。

後遺障害逸失利益は、症状固定時以降について認められます。

被害者に後遺障害は残存しているが収入額の減少が生じていない場合には、その後遺障害の程度が軽微で、被害者が従事する職業の性質からみて現在または将来における収入の減少が認められないときは、原則として、財産上の損害として認められることはありません。

しかし、被害者に減収が生じていない理由が被害者の不断の努力や使用者の温情等によるときには、長期間その状況が継続できるのか定かではない面があるため、一定程度の後遺障害逸失利益について認められることが多いです。

後遺障害逸失利益の算定に関する主な判例

[最判昭和42年11月10日民集21巻9号2352頁]

交通事故による障害のため、労働力の喪失・減退を来たしたことを理由として、将来得べかりし利益喪失による損害を算定するにあたって、上告人の採用する労働能力喪失率が有力な資料となることは否定できない。

しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかった場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない。

原判決の確定した事実によれば、被害者は本件交通事故により左大腿複雑骨折の障害をうけたが、その後従来通り会社に勤務し、従来の作業に従事し、本件事故による労働能力の減少によって格別の収入源を生じていないというのであるから、労働能力減少による損害賠償を認めなかった原判決の判断は正当であって、所論の判例に反するところもない。

[最判昭和56年12月22日民集35巻9号1350頁]

かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質から見て現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。

ところで、被上告人は、研究所に勤務する枝官であり、その後遺症は身体障害等級14級程度のものであって右下肢に局部の神経症状を伴うものの、機能障害・運動障害はなく、事故後においても給与面で格別不利益な取扱も受けていないというのであるから、現状において財産上特段の不利益を蒙っているものとは認め難いというべきであり、それにもかかわらず、なお、後遺症に起因する労働能力低下に基づく財産上の損害があるというためには、たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を是認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべきである。

終わりに

以上、交通事故による消極損害の休業損害に含まれる後遺障害逸失利益の算定について確認いたしました。

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