交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。

ここでは消極損害に含まれている扶養利益が喪失する場合について解説していきます。

扶養利益の喪失

被害者の内縁の配偶者、相続を放棄した者等、相続人として損害賠償請求権を有しない者であっても、被害者によって扶養を受けていた場合には、扶養利益の賠償を請求することができます。

ただし、扶養利益喪失による損害額は相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、被害者の生前の収入、被扶養者の生計の維持に充てられていた部分等の具体的事情に応じて適正に算定すべきとされています。

被害者の内縁の配偶者と相続人との関係については、被害者の逸失利益につき、扶養利益分が内縁の配偶者に、残余部分が相続人に帰属することとなります。

扶養利益の喪失に関する主な判例

[最判平成5年4月6日民集47巻6号4505頁]

自動車損害賠償保障法第72条第1項に定める政府の行う自動車損害賠償保障事業は、自動車の運行によって生命又は身体を害された者がある場合において、その自動車の保有者が明らかでないため被害者が同法第3条の規定による損害賠償の請求をすることができないときは、政府がその損害を填補するものであるから、同法第72条第1項にいう「被害者」とは、保有者に対して損害賠償の請求をすることができる者をいうと解すべきところ、内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が保有者の自動車の運行によって死亡したときは、内縁の配偶者は、自己が他方の配偶者から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、保有者に対してその賠償を請求することができるものというべきであるから、内縁の配偶者は、同項にいう「被害者」に当たると解するのが相当である。

そして、政府が、同項に基づき、保有者の自動車の運行によって死亡した被害者の相続人の請求により、右死亡による損害を填補すべき場合において、政府が死亡被害者の内縁の配偶者にその扶養利益の喪失に相当する額を支払い、その損害を填補したときは、右填補額は相続人に填補すべき死亡被害者の逸失利益の額からこれを控除すべきものと解するのが相当である。

[最判平成12年9月7日裁判集民199号477頁]

①不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるというべきである。

しかし、その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。

 

②これを本件についてみるに、原審は、Aの前期債務の負担状況に鑑み、扶養利益喪失による損害額の算定に当たり、同人の死亡時前年度の年収780万円をそのまま用いることなく、前記賃金センサスによる平均年収額544万1400円を用いるべきであると判断しているが、Aの債務負担額が約48億円にも達していることに鑑みると、なおこれを是認することができない。

また、Aの逸失利益全額をそのまま被上告人らの扶養利益の総額とし、これを被上告人らの相続分と同じ割合で分割して、各人の扶養利益の喪失分とした点、並びに被上告人B及び同Cについては、特段の事情がない限り、
Aの就労可能期間が終了する前に成長して扶養を要する状態が消滅すると考えられるにもかかわらず、右扶養を要する状態の消滅につき適切に考慮することなく、扶養利益喪失額を認定した点は前期①に判示した事項を適正に考慮していないといわざるを得ず、扶養利益喪失による損害額の算定につき、法令の解釈適用を誤ったものというべきである。

終わりに

以上、交通事故による消極損害に含まれている扶養利益が喪失する場合について確認いたしました。

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