交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。
ここでは積極損害に含まれる将来の介護費について解説していきます。
将来の介護費
原則として、平均余命までの間、職業付添人の場合は必要かつ相当な実費を、近親者付添の場合は、常時介護を要するときは1日につき8,000円を、随時介護(入浴、食事、更衣、排泄、外出等の1部の行動について介護を要する状態)を要するときは介護の必要性の程度・内容に応じて相当な額を、被害者本人の損害として認めています。
身体的介護を要しない看視的付添を要する場合についても、障害の内容・程度、被害者本人の年齢、必要とされる看視の内容、程度等に応じて、相当な額が定められることがあります。
将来の介護費は、被害者の後遺障害の内容・程度によって変動するものであるため、定期金賠償が相当であるとする見解も有力とされています。
原告(被害者)の申立てがない場合に定期金賠償命じることができるかについて、裁判所の判断は分かれています。
将来の介護費は、介護の必要性の程度・内容のほか、介護に必要な時間、介護態勢など介護者の介護に携わる環境、介護仕様の家屋の建築や介護用具の仕様等の事情やそれらの費用の認容額等、介護を必要とする年数が長期間に及ぶため将来に不確実な要素が多いなど、将来の予測に困難な点が多くあるか否かについても考慮されることがあります。
一時金賠償の場合、職業付添人の費用については、まず、職業付添人の蓋然性が問題となります。
近親者による付き添いと職業付添人による付き添いの双方が必要と認められる場合には、単純に同費用が基準額通り合算されるとは限りません。
また、職業付添人の費用については、将来の職業付添人報酬額の動向も考慮する必要があるため、現在要している介護費がそのまま認められるとは限りません。
被害者が若年者の場合、介護にあたる近親者の就労可能期間(67歳まで)は近親者介護の水準で、それ以降は職業付添人の水準で算定されることがあります。
現実に進出していない将来介護費用一時金賠償の方法によって受け取る場合は、中間利息が控除されます。
しかし、口頭弁論終結時までに現実に支出された付添看護費については、すでに現実の支出をしている関係上、中間利息を控除することなく実費を損害額に計上する取り扱いにする方が妥当とされることがあるため、個別の事案に応じて判断されます。
将来の介護日の終期については、平均余命より短く認定した裁判例もありますが、平均余命まで認める裁判例が大多数となっています。
交通事故後、本件事故とは別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用は本件事故による損害とは認められません。
高次脳機能障害等の後遺障害により、身体的介護を要しない看視的付添が必要とされる場合、身体的介護を要しなくても、具体的な事案に応じて相当な付添看護費用が認められることがあります。
将来の看護費に関する主な判例
【最判平成11年12月20日民集53巻9号2038頁】
交通事故の被害者が事故に起因する障害のために身体的機能の1部を喪失し労働能力の1部を喪失した場合において逸失利益の算定に当たってはその後に被害者が別の原因により死亡したとしても右交通事故の時点でその死亡の原因となる具体的自由が存在し近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り右死亡の事実は就労可能期間の認定上行流すべきものではないと介するのが相当である。
これを本件について見ると、前期一の事実によれば亡Aが本件事故に遭ってから胃がんにより死亡するまで約4年10ヵ月が経過しているところ、本件事故前、亡Aは普通に生活をしていて、胃がんの兆候は窺われなかったのであるから、本件において、右の特段の事情があると言うことができず、亡Aの就労可能期間の認定上、その死亡の事実を考慮すべきではない。
しかし、介護費用の賠償については、逸失利益の賠償とはおのずから別個の考慮を必要とする。
すなわち、(1)介護費用の賠償は、被害者において現実に支給すべき費用を補填するものであり、判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。
ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。
(2)交通事故による損害賠償請求訴訟において一時金賠償方式をとる場合には、損害は交通事故の時に一定の内容のものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付けが欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。
(3)被害者死亡後の介護費用が損害に当たらないとすると、被害者が事実審の口頭弁論終結前に死亡した場合とその後に死亡した場合とで賠償すべき賠償額が異なることがあり得るが、このことは被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由になるものではない。
以上によれば、交通事故の被害者が事故後の別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用を右交通事故による損害として請求することができないと解するのが相当である。
そして前期一の事実によれば、亡Aは原審口頭弁論終結前である平成8年7月8日に胃がんにより死亡し、死亡後は同人の介護は不要となったものであるから、被上告人らは、死亡後の介護費用を本件事故による損害として請求することはできない。
終わりに
以上、交通事故による将来発生する介護費について確認いたしました。
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