交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。
ここでは消極損害のうち、被害者が死亡した場合の逸失利益について解説していきます。
死亡による逸失利益
算定方法
基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これに就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定します。
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基礎収入、就労可能期間および中間利息控除
基礎収入
給与所得者、事業所得者および会社役員
後遺障害逸失利益の場合に準じて、現実に喪失した収入額が損害と認められます。
その算定のための基礎収入は、少なくとも事故直前3カ月の平均収入が用いられ、不確定要素の強い職種については、より長期間の平均収入が用いられることがあります。
家事従事者
後遺障害逸失利益の場合に準じ、学歴計・女性全年齢平均賃金が基礎となります。
ただし、年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容等に照らし、上記平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない場合は、学歴計・女性対応年齢の平均賃金を参照するなどして基礎収入が定められます。
有識者で家事労働に従事している場合には、実収入額が学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額となりますが、下回っているときは上記の家事従事者に準じます。
幼児、生徒、学生
後遺障害逸失利益の場合に準じ、原則として学歴計・全年齢平均賃金を基礎としますが、大学生または大学への進学の蓋然性が認められる者については、大学卒・全年齢平均賃金を基礎とします。
年少女子については、原則として男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金が用いられます。
無職者(家事従事者、幼児・生徒・学生を除く)
生前の被害者の年齢や職歴、就労能力、就労意欲等が判断されます。
その場合、基礎収入は、被害者の年齢や死亡前の実収入額等を考慮し、蓋然性が認められる収入額となります。
死亡による逸失利益の基礎収入については、基本的には後遺障害逸失利益の場合に準じるため、実収入額によるのが原則とされています。
就労可能期間
後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間に準じます。
労働能力喪失期間の始期
労働能力喪失期間の始期について、未就労者は原則として18歳とし、大学進学等により18歳以降の就労を前提とする場合、修学終了予定時とされます。
上記以外の者における労働能力喪失期間の始期は死亡時となります。
労働能力喪失期間の終期
労働能力喪失期間の終期は、67歳までとし、年長者については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長いほうとすることを原則としつつ、死亡した被害者の性別・年齢・職業・健康状態等を総合的に判断して定められます。
中間利息控除
後遺障害逸失利益の中間利息控除に準じています。
民事法定利率(※)の割合で控除し、計算方式はライプニッツ方式が採用されています。
※2020年4月1日に行われた民法の改正により、民事法定利率が5%から3%に変更されました。
このため、2020年3月31日までに発生した交通事故については年5%の割合で控除されますが、同年4月1日以降に発生した交通事故については年3%の割合で控除されることに注意が必要です。
中間利息控除の基準時は、原則として、死亡時です。
ただし、以下のことについて注意しなければなりません。
- 賃金センサスを用いる場合は、症状固定時の年度の統計を使用する。
- 労働能力喪失期間を短期間に限定する場合、賃金センサスを使用するときは、原則として、学歴計・年齢対応平均賃金を用いる(ただし、家事従事者については学歴計・女性全年齢平均賃金を用いる)。
- 後遺障害室利益については、生活費控除しない。
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生活費控除率
原則として、一家を支える支柱および女性は30%〜40%、その他は50%とします。
ただし年少女子につき男女を合わせた、労働者の平均賃金を採用する場合は、生活費控除率を45%とします
[計算式]
年収額× (1 −生活費向上率)×就労可能年数のライプニッツ係数
生活費控除については、本来、収入の多寡や被害者が浪費家か節約家などで生活費は異なりますが、それを心理・判断することは困難であるため、原則として、被害者の家族構成・属性により一定割合が用いられています。
生活費控除率は、調整機能的な役割を担っており、一家の支柱の生活費控除率を低くしているのは、残された遺族の生活保障の観点を重視しているからです。
また、女性の生活費控除率を低くしているのは、基礎収入額が男性より低いことを考慮したからであり、男性と同程度の給与を取得している場合は、男性と同様に考えることができます。
なお、年少女子につき、賃金センサスの男女を合わせた全労働者の平均賃金を採用する場合は、生活費控除率を45%程度にする必要があります(40%あるいはそれ以下であれば、男性で生活費控除率を50%とした場合よりも逸失利益額が上回ってしまうため)。
収入が年金のみの者については、年金の逸失利益が認められる場合、年金の性格からして、収入に占める生活費の割合が高いと考えられることから、生活費控除率が通常より高くなります。
死亡による逸失利益に関する主な判例
[最判昭和43年12月17日裁判集民93号677頁]
本件の被害者Aの学歴等原審の認定した諸般の事情に徴し、かつ被害者の得べかりし利益を算定するにあたり控除すべき被害者の生活費とは、被害者自身が将来収入を得るのに必要な再生産の費用を意味するものであって、家族のそれを含むものでは無いことに鑑みれば、被害者Aの得べかりし利益を算定するにあたり控除すべき同人の生活費が、その全稼働期間を通じ、収入の5割を超えないとする原審の判断は不当とはいえない。
[最判昭和56年10月8日裁判集民134号39頁]
交通事故により死亡した女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり右平均給与額の5割相当の生活費を控除したとしても、不合理なものとはいえない。
終わりに
以上、交通事故による消極損害に含まれる被害者が死亡した場合の逸失利益について確認いたしました。
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