交通事故の損害の種類は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分かれ、さらに人身損害は、「積極損害」と「消極損害」、「慰謝料」に分かれます。
ここでは慰謝料に含まれる死亡慰謝料の算定について解説していきます。
死亡事故の慰謝料額の算定
慰謝料額は一切の事情を考慮して定められるので、考慮される事情は算定基準に掲げたものに限りません。
なお、一家の支柱の定義につき、例えば、独身者であるが高齢の父母に仕送りをしていた場合、一家の支柱にあたるかについて議論されますが、上記の慰謝料額は基準に過ぎず、独身者であるが高齢の父母に仕送りをしていたという事実を前提に、その他一切の事情を斟酌して慰謝料額が定められることから、必ずしも慰謝料額を決定づけるものではありません。
死亡慰謝料額の算定に関する主な判例
[最判昭和38年3月26日裁判集民65号241頁]
所論は、原審が上告人の本訴請求に対して慰謝料額金10万円しか認容しなかったのは、原判決の認定事実に比して著しく安きに失し、衡平の理念に反し、個人の尊厳と両性の本質的平等を規定した民法1条の2の理念に反するものであるというが、慰謝料額の認定は、原審の裁量に属する事実認定の問題であり、ただ右認定額が著しく不相当であって経験則もしくは条理に反するような事情でも存するならば格別、原判決認定の事実に照せばそのような特別の事情も認められないから、所論は採るを得ない。
[最判昭和38年4月30日裁判集民65号761頁]
慰謝料額は、裁判所において諸般の事情を考慮して量定すれば足りるのであって、その量定の根拠を逐一説示しなければならないものではない。
[最判昭和44年10月31日裁判集民97号143頁]
不法行為にもとづく慰謝料の金額をいかに算定するかは、原則として、事実審裁判所の自由裁量に属するところであり、原判示の諸般の事情を考慮したうえ、訴外A本人の慰謝料の金額を金60万円と算定した原審の判断に、所論の違法は認められない。
[最判平成6年2月22日民集48巻2号441頁]
炭鉱労務に従事してじん肺にかかった者又はその相続人が、雇用者に対し、財産上の損害の賠償を別途請求する意思のない旨を訴訟上明らかにして慰謝料の支払いを求めた場合に、じん肺が重篤な進行性の疾患であって、現在の医学では治療が不可能とされ、その症状も深刻であるなど判示の事情の下において、その慰謝料額を、じん肺法所定の管理区分に従い、死者を含む管理四該当者につき1200万円又は1000万円、管理三該当者につき600万円、管理二該当者につき300万円とした原審の認定には、その額が低きに失し、著しく不相当なものとして、経験則又は条理に反する違法がある。
一家の支柱以外の者に対する死亡慰謝料
一家の支柱以外にの者については、幼児から高齢者まで様々で、家族構成もいろいろありうることから、基準額とはいえ、一定の幅を持たせた慰謝料額とされています。
飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反等加害者の悪性が強い場合に慰謝料の増額が考慮されます。
それは、被害者あるいは被害者の遺族が受けた精神的苦痛が大きなものだと考えられているためです。
被害者の近親者固有の慰謝料は、近親者自身が被った精神的苦痛についてのものであるから、被害者の有する慰謝料請求権とは別の訴訟物であるとされています。
しかし、被害者の慰謝料請求権は以下のことを斟酌し、死亡慰謝料に本人分および近親者分を含むものとして基準額が定められています。
- 近親者が受けた精神的苦痛も考慮され、被害者の慰謝料請求権と近親者固有の慰謝料請求権は異なりあうものである。
- 近親者の多くは死亡した被害者の慰謝料請求権を相続しており、固有の慰謝料請求権を行使したか否かによって慰謝料額に差が生じる事は相当ではない。
また、文言上民法711条に該当しない者であったとしても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視できる身分関係で被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条を類推適用し、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求することが認められています。
一家の支柱以外の者に関する主な判例
[最判昭和49年12月17日民集28巻10号2040頁]
不法行為による生命侵害があった場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求し得る事は、民法711条が明文をもって認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうるものと解するのが相当である。
本件において、原審が適法に確定したところによれば、被上告人Aは、Bの夫である被上告人Cの実妹であり、原審の口頭弁論終結当時46年に達していたが、幼児期に罹患した脊髄等カリエスの後遺症により跛行顕著な身体障害等級2号の身体障害者であるため、長年にわたりとBと同居し、同女の庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続が期待されていたところ、同女の突然の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたというのであるから、被上告人Aは、民法711条の類推適用により、上告人に対し慰謝料を請求しうるものと理解するのが相当である。
また、交通事故により受傷し慰謝料につき示談が成立した後に、交通事故を原因として被害者が死亡した場合の慰謝料請求権については、次のような最高裁判例があります。
[最判昭和43年4月11日民集22巻4号862頁]
精神上の損害賠償請求の点については、Aおよび上告人らはまず調停においてAの受傷による慰謝料請求をし、その後A死亡したため、本訴において、同人の死亡を原因として慰謝料を請求するものであることは前記のとおりであり、かつ、右調停当時Aの死亡することは全く予想されなかったものとすれば、身体障害を理由とする慰謝料請求権と生命侵害を理由とする慰謝料請求権とは、被侵害権利を異にするから、右のような関係にある場合においては、同一の原因事実に基づく場合であっても、受傷に基づく慰謝料請求と生命侵害を理由とする慰謝料請求とは同一性を有しないと解するを相当とする。
ところで、右調停が、原判決の言うように、Aの受傷による損害賠償のほか、その死亡による慰謝料も含めて、そのすべてにつき成立したと解し得るためには、原判決の確定した事実関係のほか、なおこれを肯定し得るに足る特別の事情が存在し、かつ、その調停の内容が公序良俗に反しないものであることが必要であるといわなければならない。
けだし、右Aは老齢とはいえ、調停当時は生存中で(なお、上告人の主張によれば、前記のとおり調停成立後10月を経て死亡したという。)、右調停はA本人も申立人の一人となっており、調停においては申立人全員に対して賠償額が僅か5万円と合意された等の事情にあり、これらの事情に徴すれば、右調停においては、一般にはAの死亡による慰謝料についても合意したものとは解されないのを相当とするところ、この場合を持ってなおAの死亡による慰謝料についても合意されたものと解するためには、Aの受傷が致命的不可回復的であって、死亡は殆ど必至であったため、当事者において同人が死亡することあるべきことを予想し、そのため、死亡による損害賠償をも含めて合意したというような前記のごとき特別の事情等が存在しなければならないのである。
しかるに、原判決は、このような特別の事情等を何ら認定せずして、Aの死亡による慰謝料の損害賠償をも含めて合意がなされたとし、本訴請求を排斥したものである。
しからば、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな心理不尽、理由不備の違法があるものというべく、論旨はこの点において理由があるに帰する。
終わりに
以上、交通事故による慰謝料に含まれる死亡慰謝料の算定について確認いたしました。
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