損害概念と損害項目
被害者が交通事故による損害賠償請求を行うためには、損害の発生について主張・立証をしなければなりません。
損害の概念については、諸説存在しますが、実務上は債務不履行・不法行為がなければ被害者が置かれているであろう財産状態と、債務不履行・不法行為があったために被害者が置かれている財産状態との差額を損害と捉える「差額説」に基づき、複数の損害項目を個別に算出し、これらを精算してその損害額が算出されます。
損害の種類は、人身損害と物的損害に大きく分けられ、人身損害は、さらに治療費・付添看護費などの積極損害、休業損害・後遺障害逸失利益などの消極損害、精神的損害としての慰謝料に区別されます。
算定基準の種類
損害の算定は、各個別事案ごとに判断されるのが建前とされていますが、大量な事件処理の必要、公平性の担保および被害者救済の観点から裁判所では損害項目ごとに一定程度定型化された算定基準を用いています。
算定基準を定型化したものには、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編「損害賠償額算定基準(通称、赤い本)」や公益財団法人日弁連交通事故相談センター編「交通事故損害額算定基準(通称、青本)」等があり、現在、裁判実務では、「赤い本」に記載された基準が多く用いられています(赤い本基準)。
また、裁判外では自動車損害賠償保障法上の保険金額の支払基準である「自賠責基準」各任意保険会社が独自に定めた計算方法である「任意保険基準」が存在します。
「自賠責基準」・「任意保険基準」の両者の基準は、「赤い本基準」に比べ、損害額は低額となることが多いです。
積極損害
交通事故の損害は、上記のように大きく人身損害と物的損害に分かれます。
人身損害は、さらに積極損害、消極損害および慰謝料に分かれます。
積極損害には、以下のものが含まれます。
- 治療関係費
- 付添費用
- 将来介護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 装具・器具等購入費
- 家屋・自動車改造費
- 葬儀関係費用
- 損害賠償請求費用
- 後見関係費用
- 弁護士費用
- 遅延損害金
- その他の費用
それでは、積極損害のそれぞれについて確認していきます。
治療関係費
治療関係費には、以下のものが含まれます。
- 治療費
- 柔道整復等の施術日
- 器具薬品代
- 温泉治療費等
- 入院中の特別室使用料
- 症状固定後の治療費
- 将来の手術費
- 治療費等
これらは必要かつ相当な範囲で全て損害として認められます。
相当期間の治療の後、これ以上治療を施しても大幅な改善が見込めない状態を「症状固定」といいますが、症状固定後の損害は、後遺障害に関する賠償(後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料)として扱われるため、症状固定後の治療関係費は、原則として損害として認められません。
しかし、症状固定時の状態を維持するために治療が必要な場合や症状固定時から口頭弁論終結までの間のリハビリが行われている場合には、例外的に「将来の治療費」や「症状固定後の治療費」として認められることがあります。
また、医師の指示がない場合の柔道整復(整骨院・接骨院)の施術費については問題となることが多く、施術が症状改善に効果があり、施術費用の妥当性がある限りにおいて損害として認められますが、施術費全額を損害として認めている裁判例は余りありません。
付添費用
医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要と認められた場合、被害者本人の損害として、入通院付添費および症状固定までの自宅付添費が認められています。
職業付添人については実費を、近親者付添人については一定の日額(入院の場合は1日2につき6500円通院の場合は1日につき3300円)に付添いをした日数を乗じた額が損害となります。
将来介護費
将来介護日とは、被害者に対する症状固定後に必要となるであろう介護費用のことをいいます。
医師の指示または症状の程度により必要があれば、原則として職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日8000円が被害者本人の損害として認められますが、具体的看護の状況により介護日は増減することがあります。
入院雑費
入院雑費とは、入院中に必要となるものを購入・賃借するために必要となる費用のことで、以下のものがふくまれます。
- 入院雑貨費(寝具、衣類、洗面具、食器購入費)
- 栄養補給費(栄養剤など)
- 通信費(電話代、切手代)
- 文化費(新聞雑誌代、ラジオ・テレビ賃借料等)
- 家族通院交通費等
入院期間中に支出した費用全てが損害と認められるわけではなく、必要かつ相当な範囲内で認められます。
近年、1日につき約1500円で定額化されています。
通院交通費
症状等によりタクシー利用が相当とされる場合以外は電車・バスの料金が、自家用車を利用した場合は実費相当額がそれぞれ認められます。
自家用車を利用した場合の実費として駐車場代、ガソリン代等が含まれます。
また、被害者の症状が重篤な場合や被害者が年少の場合には、近親者の付き添い交通費や見舞いのための交通費も被害者本人の損害として認められます。
学生・生徒・幼児等の学習費、保育費、通学付添費等
事故による被害の状況に加え、被害者の年齢や家庭状況を考慮し、学習、保育、通学付添いの必要性が認められた場合、損害として認められます。
装具・器具等購入費
治療期間中および症状固定後に装具・器具等を使用する必要がある場合には損害として認められます。
また、交換の必要があるものについては、原則として将来の費用が全額認められます。
なお、社会福祉制度上給付がなされる装具・器具については、すでに給付がなされている分は損害から控除されますが、将来分についてあらかじめ控除しないというのが通例となっています。
家屋・自動車等改造費
被害者の受傷および後遺障害の程度・内容を考慮し、玄関、浴室、自動車等について改造の必要性が認められた場合、相当額が損害として認められます。
また、転居した場合には、転居費用及び家賃差額が損害として認められることがあります。
葬儀関係費用
葬儀費用として支出した全額が認められるわけではなく、相当性のある範囲内で認められます。
近年は、原則として約150万円で認められています。
なお、香典返しは損害として認められません。
損害賠償請求費用
診断書料等の文書料、保険金請求手続費用等が損害として認められることがあります。
後見関係費用
成年後見開始の審判手続費用等が損害として認められることがあります。
弁護士費用
訴訟における損害賠償の認容額の1割程度は弁護士費用相当損害金として認められることが多いです。
ただし、事前交渉に基づく示談や訴訟上の和解が成立した場合には、弁護士費用は考慮されないのが一般的です。
遅延損害金
不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者の請求しなくても不法行為の時から当然に履行遅滞となります。
交通事故による損害賠償債務の遅延損害金の起算点は、事故が起こった日となります。
わかりやすく言えば、事故が発生した時点では損害額が確定していない場合でも、確定した損害額全額について事故日にさかのぼって支払日までの遅延損害金が認められるということです。
その他の費用
被害者の死亡によってうつ病となった親族の治療費、医師への謝礼金等が損害として認められることがあります。
終わりに
少し記事が長くなってしまったので今回はここまでといたします。
交通事故と損害賠償の関係のうち「消極損害」「慰謝料」については別の機会に確認したいと考えています。
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