交通事故による損害の種類は、人身損害と物的損害に大きく分けられ、人身損害は、さらに治療費・付添看護費などの積極損害、休業損害・後遺障害逸失利益などの消極損害、精神的損害としての慰謝料に区別されます。
ここでは、交通事故による消極損害について確認していきます。
消極損害
交通事故による消極損害は、以下のものに分類されます。
- 休業損害
- 後遺傷害逸失利益
- 死亡逸失利益
休業損害
休業損害とは
休業損害とは、事故による受傷により休業し又は十分な就労ができなくなったために、治癒または症状固定の時期までに現実に得ることができたであろう収入等が得られなかったことによる損害のことをいいます。
休業損害には、支給されるはずであった給与だけでなく賞与の減額諸手当および昇給も含まれます。
また、休業損害は、事故後から障害の治癒時または症状固定時までの期間に限り認められ、それ以後については、後述する行為障害による逸失利益の問題として区別されています。
休業損害の算定方法
休業損害額は、現実の損失額が証明している場合にはその額となりますが、現実の損失額が判明していない場合には、基礎収入の日額を認定し、これに実際に休業した日数を乗じて算出します。
現実の損失額が判明する事は少なく、職業別の基礎収入額の算定方法に従い、休業損害額を算出します。
なお、自賠責保険では、原則として休業1日あたり5,700円の休業損害を支払うこととされており、5,700円以上の減収があることが立証された場合に限って、例外的に休業1日あたり19,000円を上限として、実損額が休業損害として支払われます。
それでは、基礎収入額の算定方法に従い、休業損害額が算出される職業の分類について確認してみましょう。
給与所得者
給与所得者の場合、事故前3カ月の平均賃金を基礎に休業損害を算出し、不確定要素の強い職種については、より長期間の平均収入を基礎とします。
有給休暇を使用した場合は、計算上収入源が生じていなくてもその期間を休業期間として扱うことが認められます。
賞与や諸手当の不支給、休業による降格や昇給昇格の遅延による減収も損害に含まれるとされています。
所得税や住民税等の税金分を控除すべきかについては争いがあるものの、控除せずに算定するのが一般的とされています。
事業所得者
個人事業者や自営業者等の事業所得者の場合、原則として事故前年の所得税確定申告書によって所得額を認定し、実治療日数を指標として休業日数を認定します。
また、休業中の家賃、従業員給料などの支出のうち事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められます。
確定申告書に基づかずに実際の所得額を立証するのは困難であり、立証ができなかった場合には、賃金センサスの平均賃金に基づき休業損害が算定されます。
会社役員
会社役員の報酬は、そのすべての収入が休業損害の基礎とはなるのではなく、労働の対価としての収入(労務対価部分)と利益配当としての収入(利益配当部分)のうち、労務対価部分が基礎収入となります。
そして会社の規模、業務内容、営業状態、役員の職務内容や年齢、他の役員の職務内容や報酬額を参考にして、労務対価部分の割合が判断されます。
家事従事者
家事従事者が休業した場合には、受傷により家事に従事することができなかった期間について、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均賃金額を基礎として、損害額が算出されます。
家事従事者とは、年齢および性別にかかわらず家事を専業にしている者をいいますが、1人で生活を営んでいる者や家事の手伝いをする程度の者は、家事従事者には含まれません。
家事従事者がパートタイマー等の兼業主婦である場合、その現金収入と賃金センサスとを比較し、高い方を基礎収入とします。
無職者
失業者
失業者には原則として休業損害は認められませんが、具体的な就職の予定がある場合や、労働能力および労働意欲に加え、就労の蓋然性がある場合には損害が認められます。
ただし、就労の蓋然性がある場合であっても、その立証に困難が伴うため、仮に立証がなされたとしても、賃金センサスよりも定額となることが多いです。
学生、生徒、幼児等
学生、生徒、幼児等は、原則として休業損害は認められませんが、アルバイト等による収入がある場合や、就職時期の遅延が生じた場合には、例外的に認められることがあります。
休業損害の立証方法
給与取得者
就業先が作成した、休業日数、給与おやび賞与の不支給、休業前3ヶ月の給与が記載された「休業損害証明書」により休業損害を立証します。
休業損害証明書は、一般的に任意保険会社所定の書式に従って作成され、これに自己前年度分の源泉徴収票を添付することが多いです。
事業所得者
一般的には、事故前年度の確定申告書により立証します。
また、納税証明書や課税証明書等を提出する場合もあります。
ただし、事業を始めたばかりで確定申告前である場合など、金銭出納帳や帳簿等の写し等を提出して日収入を立証する場合もあります。
会社役員
一般的には、事故前年度の源泉徴収票や確定申告書を提出します。
また、役員報酬のうち労務対価部分を立証するため、「法人事業概況説明書」などを提出することもあります。
後遺障害逸失利益
後遺障害の認定
後遺障害とは、交通事故による受傷が将来においても回復の見込めない状態(症状固定)となり、交通事故と残存した障害との間に相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められるもので、労働能力の喪失を伴うものをいいます。
行為障害に対する自賠責保険金の給付を受けるためには、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所による等級認定を受ける必要があります。
被害者は、被害者請求(16条請求)あるいは一括払制度に伴う事前認定により行為障害等級認定を受けます。
後遺障害等級認定は、被害者あるいは任意保険会社により提出された行為障害診断書等の書面に基づき、障害認定基準に沿って行われます。
被害者は、後遺障害等級認定に不服がある場合には、それぞれの等級認定申請の相手方に対し異議を申し立てることができます。
- 被害者請求の場合、自賠責保険会社
- 一括払い制度に伴う事前認定の場合、任意保険会社
ただし、一般的には、未提出の検査結果や医師の意見書等、新たな資料を提出しなければ認定が変更される事はほとんどありません。
後遺障害逸失利益の計算
後遺障害逸失利益とは、交通事故による後遺障害がなければ将来的に得られていたであろう収入等の利益をいい、以下の計算式に従い算定されます。
基礎収入
後遺障害逸失利益における基礎収入は、基本的に休業損害における基礎収入と同様となります。
ただし、後遺障害逸失利益は将来得べかりし利益であるという特殊性から、若年労働者の場合には、実収入ではなく全年齢平均の賃金センサスを用いることがあります。
また、学生生徒行事等については、休業損害と異なり賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額を基礎となりますが、実際には収入を得ていないため、収入額、支出額および算定期間等により調整されることがあります。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、労働能力がどの程度低下したかを数値化したものであり、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発551)別表労働能力喪失率表を参考にして、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況などの個別具体的な事情が総合的に判断して認定されます。
労働能力喪失機期間
労働能力喪失期間の始期は症状固定日であり、未就労者の場合、原則として18歳とされていますが、大学へ進学する場合は修学終了予定とされます。
終期は、原則として67歳までとされていますが、年長者は、67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長い方とされています。
なお、むち打ち症(頸椎捻挫や腰椎捻挫など)の場合には、一定期間に制限されることが多いです。
中間利息控除
被害者は、一時金で支払われた損害賠償金を運用等することにより、年払いで支払われた時に比べ、より大きな保証を得ることとなるため、逸失利益の計算の際には、利益が生ずるであろう時までの中間利息を控除する必要があります。
東京地方裁判所では、ライプニッツ式を用いて中間利息控除の計算を行っています。
また、中間利息控除の基準値については、症状固定時とする見解と交通事故時とする見解がありますが、一般的には症状固定時とされることが多いです。
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故により死亡しなければ将来的に得られていたであろう収入等の利益をいい、以下の計算式によって算定されます。
基礎収入
死亡逸失利益における基礎収入は、基本的に後遺障害逸失利益の場合と同様となります。
ただし、高齢者については、年金の逸失利益性が問題となります。
この点、最高裁判所は国民年金の老齢年金、退職年金を死亡逸失利益の基礎収入とすることを認めています。
しかし、遺族年金や年金恩給である扶助料については、基礎収入として認めていません。
国民年金の受給前であっても、受給資格を得ている場合には、基礎収入として認められることがあります。
生活費控除率
死亡逸失利益の算定においては支出することがなくなった生活費向上する必要があり、死亡後の生活費を明らかにすることが困難であることから、以下の生活費控除率が用いられています。
就労可能年数
就労可能年数の未就労者の場合、原則として18歳とされますが、大学へ進学する場合は修学終了予定とされています。
一方周期は、原則として67歳までとされていますが、年長者は、67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長い方とされています。
なお、年金の逸失利益は、平均余命に基づいて計算されます。
中間利息控除
被害者は、一時金で支払われた損害賠償金を運用等することにより、年払いで支払われた時に比べ、より大きな保証を得ることとなるため、逸失利益の計算の際には、利益が生ずるであろう時までの中間利息を控除する必要があります。
東京地方裁判所では、ライプニッツ式を用いて中間利息控除の計算を行っています。
また、中間利息控除の基準値については、症状固定時とする見解と交通事故時とする見解がありますが、一般的には症状固定時とされることが多いです。
幼児の養育費
幼児が死亡した場合、将来の養育費の支払いを免れた部分については、死亡逸失利益から控除されません。
終わりに
以上、交通事故による損害の消極損害について確認いたしました。
神戸の交通事故被害者応援団では、突然の交通事故により受傷したみなさまが、安心して治療に専念し少しでも早い社会復帰できることを目標に、サポートいたします。
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